来週6月23日(木)に迫ったイギリスでの国民投票。

イギリスがEUに残留するか離脱かの世紀の決断を国民に問う大きな投票です。

今回は、EUに残留するか離脱するかのイギリス情勢を現地の生の声を聞きながら、考えてみたいと思います。

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イギリスの国民投票に注目!EUの行方は!?

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国の大きな決断を国民に任せる国民投票で記憶に新しいのはスコットランド独立の是非を問う国民投票ではないだろうか?

今回はそれ以上に世界に大きな影響力を持つ投票に成ると言って過言ではなく、そのため国内外から大きな注目を集めています。

イギリスに10年以上住んでいる筆者としても、イギリス国民がどのように考えているのかを知るのは非常に興味深いことです。

4月時点でのイギリス国内での世論調査では、残留派40%、離脱派39%と非常に拮抗している状態です。周りにいるイギリス人に聞いても、『どちらを選べば良くわからない』とする意見の人が非常に多く迷っている様子です。

イギリス人保守党党首であるデイビット・キャメロン氏は残留派を表明しており、経済や金融市場の影響からEU残留の必要性を説いています。反して、元ロンドン市長であるボリス・ジョンソン氏やイギリス独立党のナイジェル・ファラージュ氏離脱派を明確に支持。こちらは主に、イギリスの増え続ける移民問題やイギリス独立政治を主張しています。

それでは、それぞれの背景をもう少し詳しく見ていきたいと思います。

イギリスの国民投票が何故行われることになったの?

イギリスの国民投票が何故行われる様になったのかということですが、まずはイギリスの国内政治と関係があります。

ギリシャの信用不安からEU参加に懐疑的な人々が増え、ここ最近ではイギリス独立党が急激に支持率を伸ばしデイビット・キャメロン率いる保守党に迫る勢いを見せてきました。

保守党の中でもEU参加に懐疑的な議員が出るなど、与党の中でも意見が割れてきていました。

そんな中、2013年に行われた議会選挙で、デイビット・キャメロン首相はマニフェストの中で保守党が続投されたらEU離脱か残留かの国民投票を行うということを公約したのです。

選挙では保守党の勝利となり、首相は公約通りに国民投票の実施に踏み切ることになりました。

イギリスの国民投票の世論調査

6月13日に発表された世論調査では、イギリスの国民投票「ブレグジット/Brexit」で離脱53%対残留47%と離脱派が6%上回ったことになりました。

4月の時点ではまだ残留派の方が多かったわけですが、投票10日前に離脱派が増えてきたということになります。

ブレグジット(EU離脱問題)での国民投票では右派左派という分け方ではなく、50代より上の年齢では離脱派が多く20代などの若者はEU時代しか知りませんから残留の声が大きいという年齢によって違いが出るという特徴があります。

また職業によっても大きく意見が変わり、大企業や会社経営者は経済の安定を理由に残留派が多く、労働者や移民問題を懸念している人は離脱を望んでいる声が多いです。

漁師はEUでの共同漁業権で苦労していることから90%以上がEU離脱を支持するとの声があります。

スコットランドではEU残留の声が多く、もし離脱ということになればスコットランド独立への国民投票が再懸念するとも言われています。

イギリスのEU残留を支持する背景は?

<イギリスのEU残留を支持する人物>

・デイビット・キャメロン氏(英国首相)
・ジョージ・オズボーン氏(財務大臣)
・テレーザ・メイ(内務大臣)
・サディク・カーン(ロンドン市長)
・ニコラ・スタージョン(スコットランド民族党)
・ジェレミー・コービン(労働党党首)
・ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー
・保守党のエリート、ニューレイバー、大企業

▪️ イギリスのEU残留を求める理由
・自由貿易と治安がメリット
・イギリス経済の安定
・残留することでEUへの政治統合への交渉が可能

▪️ 金融市場への影響
イギリスがEUから離脱すれば、直近では大きなポンド安となり金融市場に激震が走ると予想されます。すでに市場は国民投票の情報を織り込み始め、ポンド円も150円を切るなど円高に向かっています。

大きなドル高円高が進み、世界経済にも大きな影響を及ぼします。

実際に、ポンドドルも1.400を割る可能性も出てきていて、リーマンショック以来の水準となりそうです。

▪️ 自由貿易と経済
さらに、EUに留まらなかった場合、EU内での自由貿易ができなくなることから経済の停滞が懸念されるという。また移民によって特定の仕事の賃金が下がり、企業を経営する側からすると移民が減ることによって負担が増えると考えられる。

イギリスに進出している日本企業だけでも1000社以上。もし、イギリスがEU離脱となった場合はこういった外国企業も撤退やEU加盟国に拠点を移すことが考えられ、英国経済に大きな影響を齎すであろうと言われています。

▪️ 政治統合への交渉
またイギリスがEU残留することを前提に、政治統合へイギリスに有利な条件で交渉することが可能であり、現状より改善される可能性が大きく含まれている。

イギリスがEU離脱を希望する声との思惑は?

<イギリスのEU離脱を支持する人物>

・ボリス・ジョンソン(元ロンドン市長)
・マイケル・ゴープ(司法大臣)
・ナイジェル・ファラージ(イギリス独立党)
・イアン・ダンカン・スミス(保守党元党首)
・リアム・フォックス(元防衛大臣)
・プリティ・パテル(雇用担当大臣)
・左翼・右翼の折衷

▪️ イギリスのEU離脱を求める理由
・EU政策による金銭的な負担
・難民や移民問題
・医療福祉や賃金、住宅への負担
・政治統合による英政治への制限

▪️ EU政策による金銭的な負担と医療福祉への充実
イギリスがEU予算に支払う金銭的な負担は170億ユーロ、支払われる予金額は63億ユーロとなっており、差し引き約110億ユーロの金銭負担となる。離脱派の主張としては、その金額をNHSへの予算を拡大して医療や福祉を充実させるべきではないか。

▪️ 移民や難民問題
EU離脱派のイギリス国民の大きな主張は移民の増大による雇用圧迫や福祉制度の乱用であると感じます。イギリスは階級社会のため労働者階級には根強い人種差別や移民反発があります。ポーランドなどの東ヨーロッパがEUへ加盟して、自由にイギリスへ出入りし就労が許可されたり、生活保護を受け取る権利を得ることで、自国民が財政圧迫による被害を被っていると考える人が多く、特に労働者階級の人はそう言ったプロパガンダを信じてしまっている人は数多くいます。

EUが更に経済的に困窮している国々を加えることで、イギリスがその負担をする意味があるのか?そして、ヨーロッパの国へ入ってしまえば、どこへ行くのも自由であるという権利を与えられることで、イギリス国内の治安が悪化するのではという懸念があり、移民や難民に対して厳しい目を向ける人も多くいます。(実際、私もそのような話で議論になったことがあります。)

▪️ 医療福祉や賃金、住宅への負担
EUの予算として組まれている約110億ユーロという負担を国内の医療福祉や住宅へ回せば20%という高い消費税や所得税が外へ流れるのを食い止め、充実した制度を国民に提供できるのではないかという意見が挙がっています。

▪️ 政治統合による英政治への制限
ヨーロッパでは、イギリス法よりもEU法の方を重要視することで度々イギリス国内で問題視されています。自国民の問題をヨーロッパで覆されることも多々あり、自国の政治として独立させたいために離脱を求める声もあります。

まとめ

EUを離脱するも残留するも利点と欠点があり、イギリス国民もなかなか決断ができないようです。

イギリスがユーロに入るかどうかの問題があった時、当時は『ユーロに入らないイギリスはどうかしている』と世界的に批判されていた気がしますが、ギリシャ問題などがありユーロはガタガタで通貨としてポンドを残しておいた方がよくイギリスの決断は正しかったという結果になりました。

もし、イギリスがEUを離脱して経済がどうなるのか?金融市場が大荒れになり経済破綻してしまうという恐れから残留を求める声もありますが、EUへの支出と国民への負担を考えると離脱してもおかしくないなと考えます。スイスやスエーデンのようにEUに加入しなくても十分に評価され機能している国もあります。

こうやって見ると、個人的には経済上や金融の大きな影響を考えて、まだまだ残留した方が良いんじゃないかと考えますが、あなたはどう思いますか?

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